数万種類の製品を適した顧客に届けるために、切削工具メーカー「タンガロイ」が挑むリーンなWebサイト改善
- 社名
- 株式会社タンガロイ
- サービス名
- タンガロイ コーポレートサイト / eカタログサイト
- 事業内容
超硬合金のパイオニアとして高い材料技術力と最先端の生産技術力により、金属加工用切削工具をメインとする様々な新製品の研究開発、製造、および国内外への販売を行う。https://tungaloy.com/jp/
株式会社タンガロイは、主に金属の加工工具や金型などに使われる「超硬合金」を日本で広めたパイオニア企業。切削工具の研究開発や製造を行い、グローバル向けに販売しています。
2021年よりデジタルマーケティング強化のため、顧客向けのコンテンツ拡充に注力。ニッチな ニーズに対して、数万種のSKUにも及ぶ製品を適切に届けるための「デジタル推進」を敢行しました。
デジタル推進の一環として、コーポレートサイトとeカタログにKARTE Blocksを導入。リソース不足から「ほとんど手をつけられていなかった」サイト改善が可能となり、A/Bテストで効果検証しながら進めたキャンペーン施策ではクリック数が最大1.7倍となるなど、着実に成果を挙げています。また、改善を通じて顧客の理解が進み、よりパーソナライズした製品訴求に挑もうとしています。
マーケティング部 WEBチームの主任である横内大典さんと、KARTE Blocks運用の主担当の渡辺直昌さん、日々サイト改善を行っている同部の佐藤延明さん、若松貴仁さんから、デジタル推進の経緯、KARTE Blocksの導入理由、成果の出た活用事例や導入後のサイト運営における変化、そして今後の展望を聞きました。
社会を支える数万種類の製品を、ニッチなニーズに合わせて届ける
まずは、タンガロイの事業内容や製品の特徴について教えてください。
横内:タンガロイでは主に、金属などの表面を削り取って目的の形に仕上げるための切削工具を製造・販売しています。用途は幅広く、自動車のシャフト、航空機の機体フレーム、医療器具などにも使われ、社会インフラを支えているんです。
株式会社タンガロイ マーケティング部 WEBチーム 主任 横内大典さん
横内:切削工具は「ニッチなニーズの集合体」です。SKUは数万種に及び、さらに年間30〜60の新製品・拡充品を出しています。
製品を訴求する主な場としては、コーポレートサイトと、製品情報やCADデータを載せているeカタログがあります。サイト訪問者は切削加工に従事する職人さんなどのエンドユーザーが多く、「タンガロイ+工具名」で検索流入したり、目当ての工具の型番をeカタログで調べたりしています。
サイト運用はどのように役割を分担されていますか?
渡辺:私は、コーポレートサイトの更新やKARTE Blocksを用いたA/Bテスト、その結果の分析などを担当しています。
株式会社タンガロイ マーケティング部 WEBチーム 渡辺直昌さん
若松:私もサイトの更新、特に製品ページを担当しています。週に一度配信しているメールマガジンも作っていますね。
株式会社タンガロイ マーケティング部 WEBチーム 若松貴仁さん
佐藤:私が主に担当しているのはX(旧Twitter)の運用です。また、製品の活用事例の記事を作成したり、当社製品の導入で工費の削減量を算定する「コストシミュレーター」のUI・UXを製品チームと話し合いながら改善したりもしています。
また、タンガロイには30以上の海外現地法人があり、1つのドメインの下に10〜20種類の言語のサイトを展開しています。日本語で書いたプレスリリースを現地法人に送り、翻訳してもらったものを掲載するといった作業も私たちが行っています。
株式会社タンガロイ マーケティング部 WEBチーム 佐藤延明さん
リソース不足でコンテンツ改善はほぼ未着手。サイト運用における2つの課題
KARTE Blocksの導入を決めた経緯を教えていただけますか?
横内:タンガロイが手掛ける切削工具のビジネスは、リアルな販売チャネルに依存していました。それこそ営業担当者がお客様や販売店様へ直接伺って、紙のチラシを使うなどして製品を訴求していたんです。
しかし、切削工具は製品数が多く、お客様のニーズにあった製品の情報を提供しきれていないことが課題でした。コミュニケーションや営業の軸足をデジタル上に移すことで、より最適なマッチングを実現しようとしたのが、当社がデジタルマーケティングに注力している背景です。
それから、年に2回行うキャンペーンのLP制作、エンドユーザー向けに活用事例や使い方のコツを紹介する記事の作成、製品情報にまつわるオンラインセミナー、コスト削減シミュレーションのアプリなど、サイト上にさまざまなコンテンツを充実させてきました。
私たちが担当しているわけではありませんが、YouTubeやTikTokで製品の使い方を紹介する動画もあげています。YouTubeチャンネルの登録者数が40万人に至るほどの人気コンテンツになっているんです。
タンガロイ公式YouTubeチャンネル「TungaloyCorporation」より、「We are Tungaloy」
そうしたサイトでのコンテンツの拡充と、外部発信の強化などにより、2023年には日本語版コーポレートサイトへの訪問者数が、2020年と比べて1.5倍に増えました。
佐藤:順調にコンテンツを増やせたので、次はその精度を高めたり、来訪したお客様のニーズに合わせて適切に訴求したりするための改善をしようと考えました。しかし、当時のサイト運用の体制では大きく3つの課題があり、改善にほとんど手をつけられていなかったんです。
どういった課題でしょうか?
佐藤:1つ目の課題は、A/Bテストなどの改善施策を実施するリソースが不足していたことです。コンテンツ作成で手一杯になり、CMS上での簡単な修正くらいしかできていませんでした。
2つ目は、eカタログを親会社が管理しており、施策を実行するには承認が必要で、リードタイムが長くかかったことです。
3つ目は、それらの改善施策が各人の好みといった定性的な判断基準に基づいて行われていたので、データをもとに定量的に議論できるようにもしたいというものでした。
渡辺:そうした課題を解決するため、まずはGoogle オプティマイズを試してみることにしました。しかし、操作の難しさやHTML要素の追加ができないなど、満足できなかったんです。そこでブロック追加や編集がノーコードででき、簡単なHTMLの書き換えによってA/Bテストの実施も可能なKARTE Blocksの導入に至りました。
営業チームと連携したA/Bテストで、業界の慣行をくつがえした事例も。KARTE Blocks活用の成果
実際に導入されて、第一印象はいかがでしたか?
佐藤:抽象的な表現ですが、初めて触ったときは「柔らかいツールだな」と感じました。操作方法が直感的にわかるUIで、初心者でも使いやすかったです。
渡辺:色使いやシンプルで余白のあるデザインも「柔らかさ」を感じる部分だと思います。あとは、編集画面や説明ページなどに専門的な用語が少ないのも良いところ。操作や設定をまとめたマニュアルや、ユーザーサポートの体制も手厚く用意されていて、使い手に優しいツールだと感じました。
たとえば、少し発展的な設定の際に活用する正規表現に関しても、「こんなサイトがありますよ」とサポートサイトに記載してくれています。導入時だけではなく、導入後に必要な知識についても丁寧に書かれており、細かな部分ですが助けてもらっている感じがありましたね。
KARTE Blocksをどのように活用していますか?
渡辺:現在は、Webサイトのなかでも特にキャンペーンに関する部分の改善を行っています。バナーや文言のA/Bテストによってクリック率の変化を見たり、その結果からWebサイト改善の提案を行ったりしています。
KARTE Blocksを使ったことで成果が出た施策としては、キャンペーン対象製品のページ上部に配置するバナーのA/Bテストがあります。Aパターンはキャンペーンのイメージ画像を掲載、Bパターンは特典内容を説明するテキストを掲載して、クリック数を比較したんです。
1回目のテストを1ヶ月間行ったところ、Aパターンのイメージ画像のほうがクリックされることがわかりました。しかし、その結果をチーム内に報告すると、「Bパターンのテキストはクリックできるかどうかがわかりづらいのでは」と意見が出たんです。
そこで、Bパターンのテキストに「詳しくはこちら」というクリックを促進する文字を追記したところ、2回目のテストでは、なんとBが逆転しました。製品によって違いますが、Bパターンのクリック率がAパターンの約1.7倍になる例もありました。
一度のA/Bテストで満足せず、得られた結果の理由をチームで深掘りすることで、さらに効果的な施策を生み出せた好例でした。
結果が逆転したのは興味深い事例ですね。他にも印象的な事例はありますか?
若松:私が担当しているキャンペーンLPに掲載している、特典内容の表記に関するABテストでしょうか。
業界の慣行でもあるのですが、製品の特典内容を記述できないときは「特別価格」と書いていました。しかし、お客様からしたらわかりづらく、離脱の原因になっているのでは、という仮説を持っていたんです。
そこで営業メンバーにも協力してもらって、具体的な数字は言えないまでも、お客様のクリックを促進できるような表記案を複数作成しました。社内投票で4案に絞った上で、A/Bテストで最も効果が高かった「年内限定の驚愕割引!」という表記にしたところ、1.5倍の成果が出せました。
この結果を受けて、「特別価格」という表記を社内で使わなくなりました。A/Bテストを通じて得たナレッジが、業界の古い慣行を変えたんです。こうした改善も、私のような初心者でも直感的に操作できるという点も含めて、素晴らしいと思っています。
渡辺:現在は12〜13個の施策をページに登録して結果をチェックしており、さらに月に1本程度は新しい案を出しています。特に、PDCAを早く回すことが大事な新規ページやキャンペーンページにおいては、積極的にKARTE Blocksを使っています。
得られたデータとセグメント機能で、よりパーソナライズした製品訴求に挑む
KARTE Blocksによって、みなさんの仕事やチームの動きで変化したことはありますか?
横内:なにより、これまで手をつけられていなかった仮説検証を実行できるようになったことが大きな変化でした。KARTE Blocks上のテンプレートを使うことで工数もかかりませんし、「迷ったらすぐにKARTE Blocksでやってみよう」「検証してよかったらすぐに採用しよう」と前向きな雰囲気が出てきました。
渡辺:感覚的に施策を決めるのではなく、データをもとにした仮説を持って意思決定するようになったことも大きな変化だと思います。A/Bテストの結果も数値で明確に出るので、施策をやりっぱなしにせず、PDCAをきちんと回すようになりました。その結果、先程の「特別価格」の事例のように、社内に共有できるナレッジが貯まり始めています。
また、サイト上の顧客行動が見えるようになったため、少しずつですが顧客理解が進み始めています。今後は得られたデータをお客様のペルソナ策定にも使えるのではないか、と考えています。
今後、さらに取り組んでいきたいことは何でしょうか?
佐藤:施策の頻度と精度を高め、細かな改善をどんどん回していきたいですね。また、KARTE Blocksに蓄積されたお客様のデータとセグメントの機能を掛け合わせ、よりパーソナライズされた訴求の仕方を考えていきたいです。
渡辺:現在、コーポレートサイトのトップページにあるスライドバナーを、セグメントごとに出し分けする施策を進めています。結果が出るのはこれからですが、これまで画一的だったところを変更することでどこまで変化が出せるかは、これからの挑戦です。
横内:中長期的には、お客様のデータとセグメント機能を用いた、3つの改善方針を考えています。まずは、既存のコンテンツを見てくれた人を記録しておいて、関連するコンテンツを提供できるようにすること。
次に、既存のコンテンツがどのセグメントに刺さるかを分析して、来訪してくれた人に対して最適なコンテンツを掲載できるようにしていくこと。
そして、貯まったお客様の行動データから、セグメントごとに求めているニーズを見つけ出し、新たなコンテンツを開発していくことです。既存のコンテンツがどのようにお客様へ響くかではなく、お客様のデータを起点にして新しいコンテンツを生み出す。これまでとは逆のアプローチになると考えています。
こうした取り組みを通して顧客理解を深め、よりパーソナライズされたコンテンツ作成や製品訴求をしていきたいと思います。
※ 記事中の施策の結果数値: 取材・執筆時点の2023年10-11月 株式会社タンガロイ調べ
活用事例
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