目指すは「フリクションレスなUX」。デジタル保険「AHARA」のCVRを約10倍に押し上げたデータ改善とは

社名
三井住友海上プライマリー生命保険株式会社
サービス名
AHARA
事業内容

銀行などの金融機関窓販チャネルにおける個人年金保険を中心とした国内生命保険事業を展開している。
特に変額年金保険「AHARA」は、スマホで手続きが完結し、500円から始められる資産形成サービスとして、投資初心者でも安心して加入できるサービスを提供している。

三井住友海上プライマリー生命保険株式会社は、キャッシュレスの浸透や非対面ニーズの高まりに対応し、投資初心者でも安心して加入できるデジタル保険サービスとして「AHARA」を2023年にリリース。お申し込みから契約後のお手続きまでスマホで完結する日本初の変額年金保険として注目を集めています。

同社では投資初心者が迷いなくサービスを利用できるよう、「フリクションレスなUX」、つまりストレスなくスムーズに利用できる顧客体験を重視してきました。さらなるUX改善を目指し、同社はKARTE Blocksを導入。少人数体制ながらも、KARTE Blocksを活用し、データドリブンな改善サイクルを確立しました。その結果、わずか数ヶ月でコンバージョン率を約10倍にまで向上させています。

今回、同社デジタルビジネス戦略部 課長の松本 英人さんに、KARTE Blocks導入の背景から具体的な活用方法、生み出された成果について詳しく伺いました。

キャッシュレスの波を受けて立ち上がった投資初心者向けデジタル保険サービス

まず、AHARAの事業概要について教えてください。

松本:AHARAは、スマホで完結する500円から手軽に投資が可能な資産形成サービスです。コロナ禍で金融領域にも非対面での手続きやキャッシュレス決済などのデジタル技術が浸透したことを契機に、当社の強みをデジタルの世界でどう役立てることできるか、タスクフォースを立ち上げて検討を開始しました。「若年層を中心とした現役世代のお金に対する漠然とした不安」という社会課題を解決するため、投資初心者でも気軽に始められるデジタル保険サービスを開発しました。

サービスを開発する上では、投資初心者でも迷わず利用できることを最重視し、ストレスなくスムーズに手続きを進められるようなフリクションレスなUXの実現を目指しました。立ち上げ時に延べ120人の大学生にヒアリングを行い、保険商品特有の難しい用語を極力排除し、少ないページ数で申し込みが完了できるよう設計しました。

サービス開始当初は若年層(Z世代)をターゲットにしていましたが、実際には30代後半のユーザーが多く利用していることが判明しました。この結果、AHARAが解決すべきは、年齢を問わず「投資に取り組みたいが一歩踏み出せない」という投資初心者が抱える共通の課題であると再認識しました。「何から始めればいいか分からない」「自分に合った投資先はどれか」といった基本的な疑問や不安を持つ方が想像以上に多く、そうした方々に寄り添うサービスとして位置づけています。

松本さんのこれまでの経歴や現在の役割について教えてください。

松本:私は2016年に中途採用で入社し、2021年に一度別の保険会社に転職してWeb開発とKARTE運用を経験しました。そして、2022年に再入社しました。現在はAHARAのプロモーション・広告運用、UI/UX改善、システム企画、オペレーションなど幅広く担当しています。

部署は少人数体制のため、KARTE Blocksを使った改善施策は私一人で担当しています。新卒でITキャリアをスタートし、アプリ開発やITコンサルティングの経験があるため、簡単な技術実装であれば自身で対応しています。

三井住友海上プライマリー生命保険株式会社 デジタルビジネス戦略部 課長 松本 英人氏

経験による改善の限界を感じ、データドリブンな改善を目指してKARTE Blocksを導入

KARTE Blocks導入前、Webサイトにはどのような課題がありましたか?

松本:AHARAでは「Webサイト来訪からアカウント作成まで」と「アカウント作成から申込完了まで」の2つをコンバージョンポイントとして設定しています。それぞれ改善すべきポイントが異なるのですが、最大の課題は、前者のWebサイトに来てもらってからアカウントを作るまでの過程におけるサイトからの離脱率の高さでした。

広告出稿を増やしてリーチを拡大する前に、まずこの離脱率を改善しないと無駄な広告出稿費用につながると考えていました。離脱率を放置したままの集客は穴の空いたバケツ状態になりかねないため、先にコンバージョン率の土台づくりを優先しました。

しかし、Google アナリティクスで流入経路ごとの離脱ページや滞在時間などは分かるものの、具体的にどこでつまずいているのか、どう改善すべきかが見えませんでした。私自身のこれまでの経験やナレッジから、明らかに問題だと思われる箇所の画面改善施策を続けていましたが、「さすがにもうネタが尽きた」という状況でした。また改善施策内容に根拠を持って企画し、A/Bテストをしっかりやりたいという思いが強くなっていました。

KARTE Blocksの導入を決めた理由は何でしたか?

松本:前職時代にKARTEの利用経験があったため、このツールがないとこれ以上の改善は難しいと確信していました。社内への提案時は、コストを考慮しKARTE BlocksとKARTEの同時導入ではなく、まずKARTE Blocksだけを導入して成果を出してから次のステップでKARTEを導入するという段階的なアプローチを取りました。

実際に使ってみての印象はいかがでしたか?

松本:サポートが非常に手厚く、特にチャットサポートの方がとても丁寧に対応してくれました。最初はKARTE Live※の設定でつまずきましたが、チャットサポートの方に相談したところ、管理画面のキャプチャ付きで「ここをこう修正してください」と具体的に指示していただけたので、その場ですぐに解決できました。その他、タグ設定に関するドキュメントやFAQ、講座などのコンテンツも充実しており、安心して使い始めることができました。
※KARTE Liveとは、顧客の行動を動画で可視化することで、数値や言葉では表しきれない顧客の感情や文脈、背景などの”行間”を読み解くことができるプロダクトです。

KARTE Liveを活かした細部のUX改善により、コンバージョン率を約10倍向上

KARTE Blocksを使って効果の高かった施策を教えてください。

松本:Meta広告からの流入が最もコンバージョン率が高かったので、Meta広告を閲覧したお客さまを想定したLP改善から取り組みました。

広告データの結果から、Meta広告は、特に夜遅い時間帯に動画をみている方が多い傾向がありました。次に「なぜ夜なのだろう?」と流入元をさらに詳しく調べたところ、夜間に配信されている動画からアクセスしてくださる方が多いことが判明しました。

そこで、「そうした方々の行動に何かヒントはないか」と考え、KARTE Liveで実際の閲覧の様子を確認してみました。すると、AHARAのテーマカラーである黄色が画面でかなり目立っており、ユーザーがボタンを避けるような動きをしていることに気づいたのです。

この発見から「夜中に黄色の画面を見るのは、目に負担がかかっているのではないか」と仮説を立て、ページ全体の黄色を抑えるように変更しました。結果、コンバージョン率が10ポイント向上しました。

「こんな些細なことでも改善につながるのか」と驚きましたね。

他に印象に残っている改善事例を教えてください。

松本:アカウント登録時のパスワード設定画面での改善が特に印象的でした。登録画面での離脱率の高さに悩まされていましたが、KARTE Liveでユーザー行動が見える化されたことで、多くのユーザーがパスワード要件につまずいていることが分かりました。

当時はパスワード入力欄の横に「?」マークがあり、クリックするとパスワード要件が表示されるツールチップ仕様でしたが、多くのユーザーがその存在に気づいていませんでした。そこでパスワード要件を最初からページに表示するよう変更しました。さらに、パスワード要件がファーストビューから見切れているよりも、最初から見えたほうがいいだろうと考えて表示位置を上に移動する変更を行いました。その結果、1回目の変更(要件の常時表示)でコンバージョン率が約10%向上し、2回目の変更(表示位置の上方移動)でさらに約8%向上しました。

KARTE Blocksの導入後、どの程度数字が変化したのでしょうか?

松本:導入前にできる限りの改善を重ねましたが、成果には限界がありました。しかし、KARTE Blocksを導入していくつかの施策を重ねた結果、導入後の3ヶ月間の平均コンバージョン率は、導入前の水準と比較して約10倍にまで向上しました。流入元の広告媒体やタイミングによって差はありますが、安定的にこの数字を維持できています。KARTE Liveでの行動観察により、従来は気づけなかった細かなUXの問題点を発見し、それらをデータに基づいた継続的な改善活動によって一つひとつ解決していった成果ですね。

うまくいかなかった施策もありましたか?
松本:ありました。利用者のリスク許容度に応じて最適な資産配分を提案する「ロボアドバイザー」ページがあります。そのページを経由したコンバージョンが比較的低く、ページ数を軽減するため、導線を一時的に削除しました。しかし、変更後、早々にコンバージョン率が低下した経験があります。このことから、ユーザーが予想以上にサイト内を回遊することを望んでいると分かり、すぐに導線を元に戻しました。 すぐに戻せたのはKARTE Liveで行動を即時に可視化できたためです

一人からでもデータに基づいて効率的に施策を回せる体制を実現

現在のKARTE Blocksの運用体制や施策検討プロセスについて教えてください。

松本:基本的に私一人で運用しています。日常業務の中でKARTE Blocksに割く時間は10%程度で、毎日見るというよりも週に1回、2〜3時間まとめて分析しています。Google アナリティクスとKARTE Liveを見て、数値に異常がないか、改善点はないかをチェックし、施策を企画・実装しています。

施策の振り返りも私の中で完結させており、A/Bテストの結果を数値と定性的な判断で評価して採用・不採用を決めていますが、このやり方はあくまで最初のステップだと考えています。もちろん、私自身も「施策のアイデア出しや振り返りは多様な視点があった方が良い」と思っていますので、一人で完結させている現状が理想の形ではありません。

重要なのは、KARTE Blocksがあることで、一人からでもデータ活用の「スモールスタート」が切れるという点です。まず一人で施策サイクルを回して短期で成果を実証し、それを足がかりにチーム全体で取り組む文化や仕組みを築いていく。KARTE Blocksは、そのための強力な武器になると感じています。

複数の施策を並行して実施できるため、本来なら複数人で分担すべき作業も効率的に回せています。改善に取り組む心理的なハードルも下がり、思い切った施策にもチャレンジしやすくなりました。

KARTE Blocksを活用する上で工夫していることがあれば教えてください。

松本:ページの改善だけでなく、流入元の広告媒体とセットで考えることを重視しています。どういう流入経路でWebサイトを訪れるかによって、ユーザーの行動タイプが異なるため、文脈も含めてページの改善策を検討しています。

施策以外に、KARTE Blocks導入による変化があれば教えてください。

松本:Webサイトの本実装の効率が向上しました。当社はWebサイトの改修を内製化していないため、外部に委託して対応する必要があります。以前は、この改修が結果につながるという自信が持てない状態で工数をかけて改修を依頼することはハードルが高い状況でした。KARTE Blocksがあることで、A/Bテストで効果が実証された施策のみを本実装に回すことができるようになりました。

また、最大の変化は、データを根拠にした改善ができるようになったことです。従来は経験や感覚に頼っていた部分が、KARTE Liveによる行動観察で「なぜそこでつまずくのか」「どういう行動パターンがあるのか」が可視化できました。行動を見ていると、想定していた以上にユーザーが細かい部分でつまずいていることが分かり、先述のようなパスワード要件の表示位置のような些細な変更でも大きな効果があることを実感しました。UX改善の奥深さを改めて認識しています。

社内データとも連携を深め、サービスの拡張に応じたUXの継続的な改善に取り組む

今後の展望について教えてください。

松本:今後はKARTEの導入も視野に入れており、対面でのご相談だからこそ分かるお客様のリアルな声や背景を、オンラインでの体験にも活かしていきたいと考えています。

例えば、対面でお会いしたお客様から伺ったご状況や関心事をヒントに、同じようなニーズをお持ちのまだ見ぬお客様へアプローチできるよう、広告のターゲティングを最適化し、本当に情報を必要としている方へ的確にアプローチできるようにします。また、サイト上でもお客様の気持ちに寄り添ったご案内ができるよう、接客の改善を進めていきます。

また、Webサイトとコールセンターシステムを連携し、電話での問い合わせ体験を変革する
RightConnect by KARTE(以下、RightConnect)にも興味を持っています。私はコールセンターのSV(スーパーバイザー)も兼務しており、お客様になにか困りごとが生じた際に電話を通じた操作説明だけでは限界があると感じています。RightConnectがあれば、より効果的なサポートが提供できると期待しています。

今後はサービス自体の拡張も計画しており、それに伴ってUX改善の重要性はさらに高まると考えています。今後もKARTE Blocksを含め、KARTEシリーズを継続的に活用して、顧客データを活用したUX改善をしていきます。

※記事内の「CVR10倍向上」の数値指標について
調査期間:導入前(2025年2月〜4月)と導入後(2025年5月〜7月)のサイト全体平均CVRを比較
調査者:三井住友海上プライマリー生命保険株式会社
参考:導入前の広い期間(2024年12月〜2025年4月)と導入後(2025年5月〜7月)の比較でも同様の傾向を確認。
※ 記事内の施策結果数値について
調査時期: 2025年8月(取材・執筆時点)
調査者: 三井住友海上プライマリー生命保険株式会社

活用事例

メインビジュアルの色調整でUXを改善。CVRが10pt向上 (三井住友海上プライマリー生命保険)

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小さなUI改善が大きな成果に。パスワード要件表示でCVR向上 (三井住友海上プライマリー生命保険)

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