開発依存からの脱却で生まれた「チーム感」。コインチェックによる、職種横断で進めるWebサービス改善
- 社名
- コインチェック株式会社
- サービス名
- Coincheck(コインチェック)
- 事業内容
コインチェック株式会社は、アプリダウンロード数4年連続「国内No.1*」の暗号資産取引サービス「Coincheck」を運営しています。「新しい価値交換を、もっと身近に」をミッションに掲げ、最新のテクノロジーと高度なセキュリティを基盤として、暗号資産やブロックチェーンにより生まれる「新しい価値交換」を身近に感じられるように、より良いサービスの創出を目 指しています。
- 対象:国内の暗号資産取引アプリ 期間:2019年1月〜2022年12月 データ協力:App Tweak
変化の激しい暗号資産業界において、顧客のニーズを汲み取りながら臨機応変に対応していくのは至難の業。暗号資産取引サービス「Coincheck」などを運営するコインチェック株式会社は、変化の波にも対応しながら、顧客のニーズを汲み取り、サービスを成長させていく必要がありました。
開発リソースも限られるなか、リーンに対応するために同社ではKARTE Blocksを活用。どのように活用を進めてきたのか、コインチェック Crypto Asset事業本部 販売所事業部 販売所事業推進グループ プロダクトマネージャー(以下、PdM)の大橋航生さんにお話を伺いました。
グロースの優先度を上げられず、開発リソースがかけられない
コインチェックの事業概要について教えてください。
ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)をはじめとする29種類(2023年12月27日時点)の暗号資産を約500円から取引できる暗号資産取引サービス「Coincheck」を主なサービスとして提供しています。サービスリリース以来、初心者でも暗号資産取引に取り組みやすくするために、わかりやすいUIやUXを目指して運営してきました。
その他、法人のお客様専用窓口である「Coincheck for Business」や、NFT取引における課題解決を目指したNFTマーケットプレイス「Coincheck NFT」、毎月一定額の暗号資産を自動で積み立てる「Coincheckつみたて」などのサービスも提供しています。
Coincheckは、アプリダウンロード数が2019年から4年連続で国内No.1(※)になり、540万ダウンロードを突破するなど、多くの方にご利用いただいています。その一方で、暗号資産の取引に慣れてきたお客様の離脱がサービスの課題として存在していました。
※ 対象:国内の暗号資産取引アプリ、期間:2019年〜2022年、データ協力:AppTweak
取引に慣れた顧客は、なぜ離脱してしまうのでしょうか。
Coincheckは初心者の方でも利用し始めやすいという強みを大切にしており、暗号資産取引における自由度を高くしすぎないようにしています。一方、取引に慣れてきたお客様は、板取引などの難易度と自由度が上がる取引に移っていく傾向があります。Coincheckにはそうしたお客様のニーズを満たすための機能を十分に提供できておらず、初心者のフェーズを超えたユーザーの離脱につながっていました。
この課題に対応するために始まったのが「コインチェックつみたて」です。暗号資産という値動きが激しいものでも、一定額を定期購入することで比較的安定した投資が可能になります。ある程度、暗号資産の取引に慣れてきたお客様が手間をかけずに、積立投資を行えるサービスとしてリリースしました。
私が現在所属しているグループは、メインとなるCoincheckのアプリのグロース施策を担っているのですが、私はKARTE Blocksの導入当初「コインチェックつみたて」でPdMを担当していました。
コインチェック Crypto Asset事業本部 販売所事業部 販売所事業推進グループ PdM 大橋航生さん
当時、コインチェックつみたてにKARTE Blocksを導入するに至った背景はどのようなものだったのでしょうか。
新規顧客の主な獲得チャネルはアフィリエイトなのですが、せっかくご利用登録いただいても、初期の利用開始およびその後の継続的な利用に思うようにつながらず、獲得後のオンボーディングに課題を感じ始めていました。
しかし、Web経由の新規獲得の動線やオンボーディングを改善しようと施策を打とうとしても、エンジニアのリソースはサービス自体の開発に優先的に充てられていたため常に逼迫し、ほとんどWebサイトの改善を行えない状態でした。
実は、弊社のサービスは法令に対応しなければならない場面が多く、その対応に開発リソースがとられてしまうことが多々あります。直近では、「トラベルルール」(※)の実施が義務付けられ、その対応が必要でした。法令対応の優先度が高く、グロースのための開発は優先度が下がってしまっていたのです。
※暗号資産・電子決済手段の取引経路を追跡することを可能にするため、暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者に対し、暗号資産・電子決済手段の移転時に送付人・受取人の情報を通知する義務
そんな状況でしたから、マーケティング施策やオンボーディングのための改善施策はかなり慎重に重要度やROIを吟味した上で開発に依頼しなければならない、という状態でした。
例えば、「オンボーディング段階でお客様にリマインドを送ろう」という起案を4月にしたのですが、内容をデザイナーと詰め、エンジニアと相談したのが5-6月。そこから他の優先的な案件が差し込まれて一時待機となり、8月くらいにようやく開発着手され、実際のリリースは9月ごろになってしまうような状態でした。
起案してからリリースまで実に半年弱もかかっており、その間ユーザーのオンボーディング課題は改善できないまま。 リリースした施策に対して定量的な効果検証も十分にできておらず、効果的にPDCAサイクルを回せていませんでした。
開発を介さず、グロースに必要な改善はKARTE Blocksで
KARTE Blocksを導入する上で、検討したポイントがあれば教えてください。
先程の課題を解決するために、エンジニアの工数を使わずに対応ができるツールをいくつか検討しました。特にチェックしたポイントは、導入後に社内でPDCAを回していけるかどうか。いくつかのツールを比較検討した中で、KARTE Blocksが私たちの目指す内製化に適していると考えて導入しました。
実際にKARTE Blocksを触ってみていかがでしたか?
最初、KARTE Blocksができることを見て驚きましたね。HTMLを置き換えてリリースできるとなれば、スピード感ある改善もできそうだし、他の活用もいろいろできそうだな、と感じたのを覚えています。
私だけでなく、エンジニアもかなり喜んでいました。エンジニアも「グロースのためには対応できたほうがいいのはわかっているものの、リソース的にできない」という状態にもどかしさがあったのだと思います。
現在、KARTE Blocksはどのように活用いただいていますか?
主に新規のお客様に向けた施策です。「CTAの文言改善の効果検証」「キャンペーン情報をプロダクト上に表示する」の2つを中心にKARTE Blocksを活用しています。
前者については、CTAボタンの変更をA/Bテストしています。例えば、「つみたてを始める」というCTAボタンの下に「無料で始められます」「振込手数料はかかりません」などの文言を入れて、効果を検証してみるなど。
最初は、CTAボタンの下に注意事項のようなものを書いていたのですが、「ボタンをクリックしてもらうことが大事なのだから、ユーザーメリットを訴求してはどうか」と仮説を立て、アイデアをいろいろ出してみて、検証をしていきました。
明確に効果があると言える結果が出たので、その後ソースコード自体の書き換えも行いました。
後者については、初めてつみたてを始める方向けに不定期でキャンペーンを実施しているのですが、以前は開発工数の制約でプロダクト上ではキャンペーンの情報は表示できていませんでした。ノーコードでWebサイトをつくるサービスなどを利用して別ページを都度制作し、プロダクト画面から外部遷移させてキャンペーン情報をご案内するという対応をしていたのです。KARTE Blocksのおかげで、開発工数をかけずにプロダクト上にキャンペーン情報を掲載できるようになりました。
他にも、提供サービスの詳細情報のタイムリーな更新にも役立てています。「Coincheckでんき」や「Coincheckガス」では、電気料金やガス料金に応じてビットコインを貯めるプランや、ビットコインで決済して割引特典が受けられるプランを提供しています。
プラン内容をわかりやすく伝えるためのクリエイティブ修正や、特典内容や注意事項の正しい情報をユーザーに案内する上でKARTE Blocksを活用しています。
KARTE Blocksの有用性が社内でも広まり、最近ではコインチェックつみたてのチームだけでなく、マーケティンググループでもKARTE Blocksを利用してキャンペーンLPの作成や、記事コンテンツでのCTA改善などに取り組んでいます。
生まれた「チーム感」。お客様に価値を届けるべく職種横断でアイデアを創出
KARTE Blocksを導入してみて、なにか変化したことはありますか?
変化したことは、大きく3つあります。
一つ目は、プロダクトマネージャーやマーケターの手でWebサイトにおける仮説検証が高速にできるようになったこと。アイデアを考え、開発を都度介すことなく施策をリリースして分析するという仮説検証サイクルを実現できたことで、チームの知見も増えました。本開発より前に仮説をKARTE Blocksでリリースし、お客様からのフィードバックを受けとってから、エンジニアが開発するという流れにできたのも大きな変化ですね。
次に、開発工数の削減ができたこと。従来であれば、エンジニアに依頼しなければならなかったことが、KARTE Blocksを使って他のメンバーでも対応可能になっています。例えば先ほど例に挙げたキャンペーンの運用では毎回スキームが変化していたこともあり、サービス画面内の導線やLPの制作・修正などで開発工数が多少なりともかかってしまっていました。 そういったエンジニアの工数を最小化できるようになり、サービス自体の改善にさらに注力することができるようになりました。
最後に、「チーム感」の醸成です。先ほど申し上げた通り、これまではちょっとした改修でも逐一エンジニアを介す必要がありました。 今では、自分たちでお客様に思い立った時に直接メッセージを届け、フィードバックも得られるようになったと言えます。結果、メンバーもなんとかしてお客様にメッセージを届けようという姿勢に自然となり、アイデアもどんどん出る状態に変化しています。「お客様のために」という目線を共有しやすくなったので、職種をまたいで協力しようという空気が醸成されてきています。
今後、挑戦したいと考えていることはありますか?
エンジニアによる開発の前に仮説検証を兼ねて、KARTE Blocksを使ってサービスの改修をどんどん実行していくという流れは継続していきたいと考えています。
効率よくKARTE Blocksを使いこなすためのブロックの自社テンプレートも蓄積されてきているので、さらに施策の改善速度も上げていけるはず。当初からの課題であるオンボーディングに関する改善を重ね、さらなるサービスのグロースにつなげていきたいと思います。
活用事例
頻繁に新規公開されるキャンペーンの告知をプロダクト内画面でも手間なく実現。開発工数の削減に寄与。
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コラム記事サイトでアプリダウンロードの訴求バナーを追加で配信。コンテンツマーケティングの取り組みを強化。
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KARTE BlocksKARTE Blocks Blog開発依存からの脱却で生まれた「チーム感」。コインチェックによる、職種横断で進めるWebサービス改善